ミックス・コーヒー

 尚樹の最後の言葉に、思わず貴之が吹き出した。

 彼の、久しぶりの笑顔だった。

「おまえも、やっぱすげー頑固だな!」

 貴之があまりにもおかしそうに笑うものだから、尚樹もつられて笑った。


「……よし、行くか! この住所の場所なら都内だし、電車で行けば時間もそんなにかからないな」

「うん、早く行こう」
 ようやくいつもどおりの調子に戻った貴之に、尚樹も安心する。



 実はまだ、貴之の中でわだかまりが全て消えてしまったわけではなかった。

 美葉に嘘をつかれていたのはどうしようもない事実で、それをまだ許せてはいなかった。