ミックス・コーヒー

 だが、貴之はもちろんそうはいかなかった。

「……オレ達に、美葉を迎えに行く権利があるのかな。もしかしたら、あいつも納得して家に戻ったのかもしれないし……」

「貴之は、覚えてる? 約束」

 貴之の重い口調に、尚樹は強く静かな口調で応える。

「美葉が、自分の意志で家よりもここを選ぶなら、協力するってことと……それから、今すぐは言えなくてもいつか必ず本当のことを話してもらうこと。もし、その話を聞いた時に美葉は家に帰るべきだと思ったら、その時は力ずくでも帰すって」

 尚樹は一呼吸置く。

「今は、あいつの意志もはっきりわからないけど、あいつの口から家を出た理由もまだ聞いていない」

 貴之は、黙って尚樹を見ている。


「……だから、おれはまだ美葉を家に帰すわけにはいかないんだ」