「玄関を開けたのは、美葉で間違いないと思う。荒らされてる様子がないし」

「誰かが、ここを訪ねて来たのか」
 貴之のそれに、尚樹が頷く。

「そして、その誰かが美葉を連れて行ったんだろ。そうとしか思えないよ」

 尚樹の確信をついた言葉に、貴之はただ立ち尽くすしかなかった。



 静かな空間に、玄関の時計の針の音が響く。

 時は、確かに今も動いていた。