ただ、そのおかげで、貴之と尚樹に会えた。

 もう……会えないのかな。



 ……私をここへ連れてきた、あの黒い男は、その理由を「仕事ですから」とだけ言った。

 そして、加えて「私の仕事を邪魔する人間は誰だろうと許しませんよ」とも言った。

 ああ、あの人……どこかで見たことあると思ったら喫茶店の前をうろうろしていた人だ。
 あの時は、あっちの関係者みたいだと思ったけど、少し違うみたい。

 でも、怪しいことには変わりはなかった。



 行き場を失った私は<自分の部屋>へと向かう。
 必要最低限の物しかない部屋。
 
 フローリングの床に直に座る。