美葉と初めて出会った日は、嘘だらけの彼女の話に苛立ちはしたが、こんなに苦しい気持ちにはならなかったはずだ。

 今もそう、仰向けで寝ている貴之の胸は、何かに押し潰されそうだ。

 あの時は、美葉のことなど、貴之は全く信用していなかった。

 今は、美葉を信じてしまっているのだ。

 だから、このたった一つの嘘がどうしようもなく怖いのだろう。
 これ以上の裏切りが待っているのかもしれない、ということが。

 怖くて、不安で……たまらないのだ。



 天井にぶら下がっている電球の笠から、ホコリが今にも大量に降ってきそうだった。



『チャッチャ、チャチャッチャチャッチャ……』