その後も、美葉の評判は客の間でもなかなか上々で、貴之はこっそりと一人で胸を撫で下ろしていた。

 美葉には、接客に欠かすことのできない<笑顔>がズバリ欠けているので、客の中で受け入れられるかどうか心配だったのだ。
 しかし、少なくともこの店の常連客達にはそれは問題なかったようである。


 昼時が過ぎ、店内には客が全くいなくなったので、貴之は美葉に指示を出す。
「店の玄関前をホウキで掃いてきてくれるか」

 美葉は頷くと、ホウキとちりとりを持って外へ出て行った。


 貴之は、カウンター席に腰を下ろし、一息ついた。
 今日の彼には、もう一つ、心配事があった。

 美葉の体調である。