尚樹の話を、貴之は黙って聞いていた。

 この時には、貴之の中で心境の変化というものがハッキリとあった。

 全く美葉のことを疑っていない、というわけではないが、彼女と触れ合ううちに、たぶん警戒しなくても大丈夫な人物だろうと、なんとなく感じ始めていた。
 自分で自分が不思議で仕方なかったが。

 だから……妹、という感情まではまだないが、貴之も尚樹とほとんど同じような思いでいた。

 あと、今朝の彼女の涙のあとを見て、余計にそう思ったのも確かだ。


「まあ、貴之も同じ気持ちなんだろ」

 なぜか、尚樹には貴之の気持ちを見破られていた。

 それがなんとなく悔しくて、貴之はちっ、と舌打ちをした。