そして只今、喫茶店開店の約一時間半前。
 つまり、九時半である。

 簡単な仕込みを終えた尚樹が、一休みをしに店のキッチン(小さい)から、居間に戻ってきた。

「李の制服あった?」
 尚樹の問いに、おう、と貴之が答える。

「そろそろ着替えてくるか? 美葉。終わったら店の準備をしよう」
「うん。ねえ、貴之。ここで着替えてもいい?」

 美葉のぶっ飛んだ発言に「なんでー!!」と、貴之が叫ぶ。

「おまえの部屋、和室だから、そこで着替えなさい」

 貴之に怒られ、しぶしぶとドアに向かって歩き出す美葉。

「……ちっ」

「えっ! 今、舌打ちした?」
 驚いた貴之が振り向くと、美葉はすでに居間から廊下へと出て行ってしまっていた。