②

 車を走らせること、約一時間。

 山道を走る自分達の周りには、灯りがあまりなく、大きな目印もないが、不思議と貴之達が迷うことはなかった。

「伊藤さん、あそこ!」

 沢下が声を上げる。
 貴之も体を前に倒し、目を凝らす。

 人影だ。
 おそらく二人分だろう。

 車から飛び降りる貴之に迷いはなかった。
 たとえ暗闇だろうと、彼には、その二人が誰と誰か、ハッキリとわかっているのだ。

 そのうちの一人。
 今も、信頼している、大好きなその人の名を、貴之は叫んだ。



「シゲさん!!」