貴之は、自分にはまだ経験が足りなさ過ぎるように思えた。

 彼は、沢下の発言の答えとなるような言葉をまだ、持っていない。


 この状況の中では、どんな音楽でさえもとても合いそうにはなく、静かすぎる車内に、道路とタイヤの擦れる、ゴー…という音だけがまた、低く響いた。