川村が、すっかり飲みやすく冷めてしまった紅茶にミルクを入れる。

「ついでに言うと、恥ずかしながらお金も好きでしてね……フフッ。皮肉なもので、その二つはいつも同時には手に入らないのですよ」

 カップの中をスプーンでゆっくりかき回すと、小さな渦が出来た。ミルクがその中に吸い込まれ、そして滲んだ。

「お金によって来る女は下品な者ばかり。菅浦エリカもそうでした。ただ、筏美栗はなかなか良い女でしたね。美しい瞳だった……。邪魔でさえなかったら、と思うと惜しくてたまりません」

 カップを手に持つ。

「私は、本当にかわいそうな男です。結局いつも、本当に望む物が手に入らない」

 ミルクティーをすする……。



「てめぇ!!」
 貴之が、川村の襟元を掴み上げた。

 川村の手から、カップが転がり落ちる。