ミックス・コーヒー

「なにか証拠でもあって、そういう馬鹿げたことを言っているんでしょうね」

「川村さん、失礼します」と、今まで黙って立っていた沢下が、川村の前に着席する。

「ああ、この前の刑事さんですね」

「ええ。先日はご協力ありがとうございました」

「あなたに聞かれて話した内容が全てでしたが?」
 川村は、斜め下から沢下を睨んでいる。

「あなたはこの前、ここ一ヶ月はS県に行っていないと、そう言いました。……それは<嘘>ですね」

「嘘?」

「昨日、再度S県のあの山の辺りで聞き込みをしたところ、重要な証言を得ることができました」

「聞かせていただきましょう」

「あなたの愛車は深緑の<ミニ・クーパ>でしたね。とても素敵なセンスでらっしゃいます」

「それは、お褒めいただき、ありがとうございます」

「その、あなたの愛車が、山の麓で目撃されているんですよ。6月16日の夜9時頃……菅浦さんの遺体が発見された九日前ですね」