「オイ!! いや、オレはなんで家を出て来たのかって聞きたいの! 最初っからストレートに聞くのはちょっとアレかな、と思って一応オブラートに包んでたの!」

 貴之が大声を上げながら勢いよく立ち上がる。

「なんだ、初めっからそう言えばいいのにね……うん? なになに」
 美葉がまた尚樹に耳打ちをしている。

「なんか、桃みたいな物から産まれて、じいさんとばあさんに育てられたけど、どっちも死んじゃって身寄りないから山から下りてきた、とでも言っとけってさ」

「もうテキトウかよ!」

「竹でもいいってさ」
「宇宙人か!」
「いっそ、お椀でもいいって」
「サイズは一寸か!」

 荒くなってしまった呼吸を、なんとか整える貴之。
 尚樹と美葉は、とりあえずその様子を見守る。