ミックス・コーヒー

「おまえ、まだ全然<自分のために>生きてないじゃん。ミクリの人生は、幸せは、これからだよ」

 尚樹は、ベッドに横たわっているミクリの体ではなく、天井の方に向かって語りかけている。



 まるで、そこにミクリの姿が見えているかのように。



「今はまだ、いろいろ大変だけど、全部終わったら、自分のために生きてよ。おれが、ずっとそばにいるから。おれが、絶対にミクリを幸せにするから」


 そして尚樹は、ベッドの上のミクリに近づいた。

 そして、その場にしゃがみ込むと、ミクリの左手に自分の手を添えた。


 尚樹はゆっくりと、ミクリのその薬指の付け根を、自分の親指と人差し指で握った。