①

 病室どころか、建物の中にさえも、尚樹は入れずにいた。
 もっとも、病室は入れるような状況ではないが。


 日付は、とっくに変わってしまった。


 院内の庭で、ベンチに腰をかけ、ただただ夜空を見上げていた。

 真っ暗な闇の中に、なぜか一つだけぼんやりと輝いている星があった。

 その星だけを見つめているうちに、やがてそれに、ミクリの顔が重なって浮かび上がってきた。



 ……ミクリ。
 どうして、こんなことになってしまった?



 ミクリは誰かに刺されたのだろうが、尚樹は犯人に対しての怒りは不思議となかった。

 彼の感情はまだ、そこまで追いついてはいなかった。