①

 窓の隙間から漏れる清々しい風を、微量ながら感じる。
 心地よい眩しさが、彼に新たな一日を告げようとしていた。

 ゆっくりと重い瞼を上げると、目の前にはいつもと変わらない愛しい人の寝顔があった。

 無意識に、彼女に口付ける。

 その感触に、彼女も気づき、まだきちんと定まっていない視線をこちらへと向ける。



「おはよ」

 彼が言うと、彼女もそれを真似るように口を動かした。

「……お、はよ」



 すると、その後すぐ彼女の瞼は再び閉じ、彼との視線は合わなくなってしまった。
 
 彼女からは、また、小さな寝息が漏れていた。