ミックス・コーヒー

   ④

「事実を知るのって、辛いね」

 その夜、ミクリは尚樹のアパートに来ていた。

 数日前に自分で持参した亀のぬいぐるみを抱えながら、座布団の上に体育座りをしている、ミクリ。

「これから、もっともっと辛い事実を知ることになるかもしれないよ」

 尚樹が麦茶をコップに注いでミクリに渡した。
 ミクリは「ありがとう」と受け取る。

「……そうだよね。なんだかだんだん怖くなってきた」
 もらった麦茶を一口だけ飲んで、テーブルの上に置く。

「あたし、自分が傷つく覚悟はできてたつもり。だけど、美葉を傷つける覚悟はできてなかった」
 
 尚樹は黙ってミクリを見つめている。