その男は、よく、気味悪く笑うのだという。

 口癖は「私の仕事の邪魔をする者は誰だろうと許しませんよ」だったらしい。

 そんな怪しい探偵<川村克彦>と、シゲ達が初めて会ったのは、沢下がまだ警察に入りたての頃だった。

 その時の事件は、とある会社の社長の娘が誘拐される、というものだった。

 多額の身代金を請求され、その挙句、娘の安否は非常にあやふやなものだった。
 数回犯人からかかってくる電話からは、少女のかすかな声が聞こえてくる程度で、悲鳴を上げているのか、それとも何かを叫んでいるのか、それすらわからなかった。
 
 川村はその時、警察や家の者達と行動を共にしていたが……と、いっても同じ空間にただ居ただけ、だったが、やがてすっとどこかへ消えてしまっていた。

 そして、その後川村は、なんとその誘拐された娘を連れて現れたのだという。

 その時の、騒然としたその場で、シゲ達はただただ驚いていた。