「そんなこと、僕が店で聞いたときは教えてくれませんでした……」
 沢下は少し淋しそうにうつむいている。

 貴之は、よし子が「警察のことをあまり信用していない」と言ったのを思い出していた。
 オレ達だけに話してくれたんだ、と更にありがたく思った。

 沢下の肩をシゲがポンポンと叩く。
「よくある事さ」

「しかし……ここであいつの名前が出てくるとはな」
 シゲは尚も顔をしかめている。その表情は、どんどん厳しさを増していっているようだ。

「どんな探偵なんですか、川村って」

 貴之が聞くと、シゲは口をへの字に曲げて唸った。

「……そうだな……一言では言い表せない、異様な男だよ」

 シゲは言葉を選びながら、少しずつ話し出した。