ミックス・コーヒー

   ②

 非常に居心地が悪い。

 ここは、貴之にとって不思議な空間でしかなかった。
 出来ることなら、特にこの店には一生来たくはなかったが、事情を知ったミクリに言いくるめられてしまった。

<使えるものはなんでも使う>という精神の、あの女に。

 尚樹と付き合い始めた、ということを聞いた時は死ぬほど羨ましく思ったりもしたが……。
 貴之にはあの時、ミクリが天使の顔をした悪魔に見えた。


「コンバンワ、さゆりデス」

 やがて、合皮のソファーに座らされていた貴之と尚樹の目の前に、小柄な女の子が現れた。
 髪は茶色のボブで、瞳は真っ黒。顔立ちは全体的にハッキリとしている……。