ミックス・コーヒー

 すると、彼はその攻撃を華麗にかわし、体制の崩れた男の腹に膝で蹴りを入れた。

「うあっ!!」
 男がうずくまる。

「おいっ! ケン! 逃げるぞ!! 騒ぎになる!!」
 車の中の男が声を上げると、その男もふらつきながら立ち上がり後部座席に乗り込んだ。
 男が乗ったか乗らないかのうちに、車は猛スピードで走り去っていった。



 ミクリは、呆然とその様子を眺めていたが、自分の方を振り返った彼の顔を見ると、一気に感情が溢れ出してくるのを感じた。


「……尚、樹くん……」


 走って自分の元へ来てくれた尚樹は、すごく心配そうな顔をしていた。

 そして、その顔も、とても優しかった。


 ミクリは尚樹に抱きついた。

 溢れ出した涙は、しばらく止まらなかった。