ミックス・コーヒー

 ふと、時が止まったような気がした。

 前から迫っていたはずの手が、自分に触れてこない。
 その代わり、前方に大きな気配を感じる。

 ミクリはおそるおそる目を開ける。


 そこには、大きな背中があった。

 この背中には見覚えがある。


「……なんだよ! てめえ!!」
 自分を後ろから羽交い絞めにしていた男が叫ぶ。

 その瞬間、身動きが取れるようになった。
 突然の事に慌てた男が、ミクリから手を離したのだ。
 急いでミクリは、男達から離れた。


 大きな背中の<彼>が振り返る。

 いつもの穏やかな表情とは全く違い、かなり険しい顔だ。

「ふざけんなよ!!」
 さっきまでミクリを押さえつけていた男が、彼に殴りかかった。