ミックス・コーヒー

「河内さんは、あくまで河内さんだよ。お父さんとは思えない。それは、良い人だとか、そういう問題じゃないから」
 
 ミクリの瞳は、尚も潤んだままだったが、凛として力強かった。

「あたしのお父さんは美葉と一緒で<古亭路誠>だけだよ」


 ミクリの言葉に安心したのか、美葉の表情がようやく少し緩んだ。


 美葉は、自分で自分が不思議だった。

 憎くて、嫌いだったはずの父。
 だが、今、その父の気持ちを思うと、心が痛んで仕方がない。


 
 もう私、お父さんのこと……許してるのかな。

 お父さんは、今、天国で私のことをどんな風に思ってるのだろう。

 ……いや。たとえ、お父さんが私のことを嫌いでも。

 私が、お父さんのことをお父さんと思っているだけで……それで、いいのかもしれない。