女性の声が聞こえた。ミクリのようだ。
 時刻は4時10分を過ぎていた。
 
 カランカラン、と音をたてながらドアが開く。
 ミクリと、テレビでよく見る中年の男が店の中に入ってきた。

「はじめまして。河内と申します」
 男は軽く会釈した。

 テレビで見るよりも、優しそうで誠実な雰囲気だった。
 ただ、頭が良さそうなイメージはそのままだ。

「いらっしゃいませ。どうぞ」
 貴之は緊張しながらも、なんとか気持ちを落ち着かせ、河内とミクリをテーブル席へと案内した。

 河内の座った向かいの席に、ミクリに誘導された美葉が座る。


 貴之はコーヒーを淹れながら、カウンターから遠めに見る三人に、なんとなく重い空気が漂っているように感じていた。