「でも、ずっとそのコースターだよな」
 尚樹も参加する。

「まあな」

 そのコースターは、丈夫な布製で、少し大きめだった。
 確かにかなり使い古されているようで、赤色のような、黄色のような、茶色のような、そんな不思議な色をしている。

「父さんの形見、みてえなもんかな」



 ふうん、と美葉が静かに鼻を鳴らした。
 そして、視線を下げた。

「……全部……、燃えちゃったのかな」



「今度、沢下さんに聞いてみよう」
 ポン、と貴之は美葉の頭に手を置いた。

 シゲとは毎日会っているが、沢下とは三日前に警察署で顔を合わせたっきりだった。

 その時は、特に美葉が話をたくさん聞かれていた。
 ただ、沢下の言っていたとおり、貴之達に疑いがかけられる事はほぼなかった。