「……はい」

『あっ、タカー? 私、私』

「どっ、どうも……」

 普通じゃない様子の貴之を、尚樹と美葉は静かに見守っている。



『さっそくなんだけどさー、明日の夜とかヒマ?』

「明日ですか?! 家の方は大丈夫なんですか?」

『それがさー、昨日のアレで私、家追い出されちゃって、今、別の所にいるの』

「追い出されたって……」

『あ、でも大丈夫。たぶん。タカ達のことは言ってないし、お金持って別の県に行っちゃったみたいなこと言っといたから。たぶん。前雇ってた探偵はなぜかもう協力的じゃないみたいだし、しばらくは大丈夫だと思うよ。たぶん』

「やたら<たぶん>ってのが、すげー引っかかるんですけど……」

『なんでよ。感謝してよ、私に。じゃ、明日の夜十時にガトーホテルの向かいのコンビニで待ち合わせね』

「や、ちょっと待ってくださいよ!……明日はオレちょっと用事があるんですよ。別の日にしません?」