砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「困ったな」

 雅之は呟くと、懐から笛を取り出した。
 先ほどまで吹いていたのとは、また、別の笛を。

「この笛に聞いてみようか?
 許してくれるかどうか」

「笛?」

 どの笛ですかと、毬はようやく顔を上げた。
 涙に濡れた頬に、風が優しく触れていく。
 月の光の下だけでは、判別がつかない。

「毬姫の笛。
 今度はきちんと鳴るように、吹き込んでみたから。
 聞いてみて」

 名手が吹けば、凡庸な笛でも甘い調べを奏でることができるのだ。
 短い曲で、雅之はそれを証明してみせる。

「どう?」

子どもに言い聞かせるように、……否、実際、雅之から見れば毬はまだほんの子どもにしか見えないのだが……雅之が問いかける。