砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 気が済むまで笛を吹き終えたとき、あたりはすっかり闇へと包まれていた。

「終わったか?」

 後ろから思いがけず耳に馴染んだ声が聞こえてきて、雅之は驚いて振り向いた。

 龍星がそこに居る。
 その後ろに隠れるように、毬がいた。

「姫、お目覚めになったのですね?」

 それはよかった、と、雅之は本気で安堵するが、毬のほうは歯切れ悪く

「ええ……」

 と、言葉を濁して龍星の後ろからなかなか出てこない。

「毬姫?
 雅之に言いたいことがあるのですよね?」

「……ええ……」

 龍星に背中を押され、毬はようやく雅之のほうに歩み出た。

「どうされました?」

 眠りに落ちる前、異様に自分を怖がっていた毬のことを思い出し、雅之はあまり近づかないようにしながら声を掛けた。