一方、雅之は――
御所からの帰り道。件(くだん)の桜の樹の下へと足を運んでいた。
桜の花びらは、惜しげもなく風に乗ってあたりへと舞い散っていた。
そろそろ、桜の季節も終わりと言う事か。
龍星は気にするなといったが、愛した女ではない女と一緒に眠る男が、哀れでならない。
雅之は懐から愛用の笛を取り出し、そっと唇に押し当てた。
笛の音はあの、鬼になった男に届くだろうか。
笛の音は、男が本当に愛した女にも届くだろうか。
死んでようやく好きな男と眠れる女は幸せだろうか。
夕闇に、物悲しい笛の音が溶けていく。
御所からの帰り道。件(くだん)の桜の樹の下へと足を運んでいた。
桜の花びらは、惜しげもなく風に乗ってあたりへと舞い散っていた。
そろそろ、桜の季節も終わりと言う事か。
龍星は気にするなといったが、愛した女ではない女と一緒に眠る男が、哀れでならない。
雅之は懐から愛用の笛を取り出し、そっと唇に押し当てた。
笛の音はあの、鬼になった男に届くだろうか。
笛の音は、男が本当に愛した女にも届くだろうか。
死んでようやく好きな男と眠れる女は幸せだろうか。
夕闇に、物悲しい笛の音が溶けていく。


