ふうわり漂う甘い香り。
 優しく抱きしめられたような温かい心地よさ。

 ゆりかごに揺られるような感覚に、ついうとうとしてしまう。

 そうやって、何度も何度も眠りの世界へ引きずり込まれていた毬は、ようやく瞳を開けた。

 柔らかい明かり。
 えもいえぬ、甘い香り。

 見たこともない光景に、思わず身体を起こす。

「お目覚めだわ。龍星様をお呼びしないと」

 光が淡い声を放つ。

 これは、夢の続きかしら?


 
 花畑の真ん中にでもいるような心持になり、毬はゆるりとあたりを伺った。