砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 安倍邸の一室では、毬姫が眠り続けていた。龍星は、花の精から報告を受ける。

 花の精とはいうものの、背格好はその辺りの女房と変わらない。その上、着ているものや容姿は宮中の姫君にも引けをとらぬものなので、妖力を持たぬ雅之には、実のところ、彼女が何者なのか掴めない。

 人なのか、人にあらざる者なのか。

 もっとも、雅之にとってはそれがどちらであろうが大勢に影響はない。


 この庭でいつものように龍星と酒を酌み交わせれば、それで良かったのだ。

「姫は?」

「明日にでも目覚めそうだな」
 
「そうか……それはよかった」

 雅之は胸をなでおろす。でも、すぐその表情を不安で曇らせた。

「左大臣は姫を受け入れてくれるだろうか?」

「さぁな」

 正体の良く分からぬもの……見目麗しい女房にしか雅之には見えないのだが……に、酒の準備をさせているのを眺めながら、龍星はこたえる。