砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 視線というのは、本当に人に突き刺さるものだな、と、雅之は妙に感心していた。

 龍星に言われたまま、瞳を閉じてここで笛を吹き続けている。
 理由を聞こうとしたが、時間がないとか面倒だからとか言って教えてはくれなかった。まぁ、いつもの龍星らしい。
 笛を吹いている間は心が落ち着いているので構わないのだが、先ほどから感じる視線が針のように痛い。

 空気も、熱を帯びているように感じる。



 逃げ出したいというか、
 見て見たいというか、

 相反した気持ちが、ざわざわとした雑念が胸の奥から湧き上がる。



 そもそも、ことは既に起こっているのだ。
 目を閉じていようが開こうが、何も変わるものではあるまい。


 雅之の笛の音に揺らぎが生じた。

「雅之っ、惑わされるな!」

 龍星の声が鋭く飛ぶ。
 それは邪気を帯びた空気と、雅之の迷いをいとも簡単に切り裂いた。