砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「そんなにご心配でしたら、私が毬姫をお預かりいたしましょうか?」

 湧き出てきた感情を全て飲み込んで、穏やかに龍星は話を切り出した。

 タヌキは下卑た笑いを浮かべる。
 これでやっかい払いできる、と、顔に書いてある。

 酷い話だと、雅之はぎりぎりと拳を握り締めた。が、龍星は涼やかな顔で微笑んだ。

「では、医師と今後のことを相談してまいりますので、失礼いたします」

 命にかかわるほどの大量出血というわけでなく、ほかには問題もないので、医師は、毬の身体を動かすことに異存は唱えなかった。

 牛車の手配をすると、龍星と雅之は不愉快な気分を引きずりつつも、左大臣家を後にした。