毬が照れている間に、龍星はさっさと帝からの文を広げた。

「へぇ。
 珍しい――」

 ぼそりと呟く。

「なぁに?」

「先日のお礼がしたいから、明日にでも弘徽殿に来てほしいそうだ。それが終わり次第、御台様は左大臣家の別荘へと出かけるから、できるだけ早くお願いしたい、だって」

「罠、かしら」

 毬は眉を潜める。
 帝に対しての警戒心は、今や龍星より毬のほうがたくさん抱いているようだった。

「そんな感じには見えない」


 龍星は顔をあげて毬を見つめ、甘い笑みを浮かべた。

「仮にそうだとしても、気にしなくていい。
 一緒に行くから」

「うん。
 龍が一緒だったら大丈夫ね。
 お姉さまに迷惑をかけるわにけにはいかないから、明日行くわ」

 毬はこくりと頷いた。