しばらくして、傷も疲れも癒えた頃、帝から文が届いた。

「龍。
 どうしよう……」

 毬は、文を前にあらぬ妄想が消えず、困惑しながら龍星に相談した。
 龍星は読んでいた書物から顔をあげる。
 あれから一日も御所に出向くこともなく、こうして自宅で毬と暮らしていた。

「読もうか?」

「……でも……」

 それはそれで、気が引ける。
 龍星はふわりと、感じの良い笑みを浮かべる。

「心配しなくても、俺が書くほど情熱的な文章ではないと思うよ」

 言われて、毬はかぁと頬を朱に染めた。


 文が欲しいと強請って、初めて身体を重ねた翌日から、龍星は毎日、毬に文を送り続けてくれるのだ。
 そこには、普段無口で感情を表に出さない龍星の心の内が素直に記されていた。美しい文字、甘く読んでいてうっとりするような言葉や歌、そこに深く熱い想いが遠慮なく散りばめられていて、毬は読むたびに真っ赤になってしまうのだ。