濡れた唇を外すと、愛しい彼女は潤んだ瞳でぎゅっと着物を掴んでくる。

 そして、恥ずかしそうに勇気を振り絞った声で囁いた。

「――文(ふみ)、欲しいの。
 龍から」

 ああ、と龍星は自分の早合点を心のうちで恥じる。
 そして、毬の濡れた唇を指で拭いその身体を優しく抱きしめると耳元に唇を寄せる。

「待たせて悪かった」

 言うと、大きな掌で、毬の頭を優しく撫でた。
 
 
 あまりにも近くに居たから、毬に文を届けようなんていう気がまったく起きなかったことを今更ながら反省する。

「違うの。
 龍が悪いとか、別に、そういうんじゃなくてっ。
 ただ、……その……」

 焦る毬の顎に手をかけその顔を間近で見つめてにこりと笑うと、わざと色っぽい声で熱っぽく言う。

「毬の欲しいものなら、なんでもあげるから、遠慮せずに言って」


 途端、かぁと、耳まで紅くする毬が愛しくて仕方がない。
 感情に任せて快楽に溺れ、二人で奥まで沈み込みたくて、仕方がない。


 身体に、心に、浮かぶ不埒な熱を帯びた気持ちが、今夜はもう抑えられそうになかった。