夕食が終わった後、龍星と雅之の二人は、中庭を眺めながらいつもの場所で酒を酌み交わす。
毬は、すぐ傍で帝にもらった氷を砕いたものに黒蜜をかけたものを口に運んでいた。
夜風には、僅かに秋の気配が漂っていて、風鐸の音色がわずかに物悲しさを演出していた。
「二人を右大臣邸に送り届けてすぐ、右大臣の訃報が入ってきた。
混乱に乗じて抜け出そうかと思ったが、唯亮殿がどうしても、とついてきて……。
そのような場合ではないと説得したのだが、聴く耳持たずだった理由はあれだったんだな」
と、雅之は人好きのする顔に苦笑を浮かべて、今更ながらいきさつを告げた。
「そのようだな」
「唯亮殿に関しては……俺に責任がある、と思う」
雅之がぽつりと言う。
そもそも、当初の時点で自分が唯亮をここに連れてこなければよかったのだ。
「そんなことないわ」
二人の話を黙って耳を傾けていただけの毬だが、そこだけははっきりきっぱり否定した。
しかし、彼女の様子は、弱々しくさすがに疲れが出てきたようだった。
「毬、おいで」
龍星に誘われるがままいつものように、彼の膝を枕に横になる。
短くなった前髪が、さらりと毬の顔へとかかる。
龍星はそれをかきあげ、いつもの調子で優しく撫でた。
毬は、喉元を撫でられる子猫のように瞳を細め、あっという間に眠りに落ちていった。
毬は、すぐ傍で帝にもらった氷を砕いたものに黒蜜をかけたものを口に運んでいた。
夜風には、僅かに秋の気配が漂っていて、風鐸の音色がわずかに物悲しさを演出していた。
「二人を右大臣邸に送り届けてすぐ、右大臣の訃報が入ってきた。
混乱に乗じて抜け出そうかと思ったが、唯亮殿がどうしても、とついてきて……。
そのような場合ではないと説得したのだが、聴く耳持たずだった理由はあれだったんだな」
と、雅之は人好きのする顔に苦笑を浮かべて、今更ながらいきさつを告げた。
「そのようだな」
「唯亮殿に関しては……俺に責任がある、と思う」
雅之がぽつりと言う。
そもそも、当初の時点で自分が唯亮をここに連れてこなければよかったのだ。
「そんなことないわ」
二人の話を黙って耳を傾けていただけの毬だが、そこだけははっきりきっぱり否定した。
しかし、彼女の様子は、弱々しくさすがに疲れが出てきたようだった。
「毬、おいで」
龍星に誘われるがままいつものように、彼の膝を枕に横になる。
短くなった前髪が、さらりと毬の顔へとかかる。
龍星はそれをかきあげ、いつもの調子で優しく撫でた。
毬は、喉元を撫でられる子猫のように瞳を細め、あっという間に眠りに落ちていった。


