ん?と、毬は言葉の意味するところが分からずに几帳の向こうで首を傾げる。
まさか、この男が自分に懸想しているなどとは、夢にも思ってない。
ただ、続く沈黙を不思議に思うばかりだ。
「安倍様にご相談があって来られたのですよね?
私、席を外しますからどうぞゆるりとお話されてくださいませ」
毬は立ち上がる。
衣擦れの音が響く。
「いえ、あの。
毬姫様。
――文(ふみ)を、お送りさせて頂いてもよろしいですか?」
「文、ですか?」
毬は小首を傾げ、しばらくの間言葉の意味を吟味し、そこで初めて、唯亮が自分に恋文(こいぶみ)を送ってよいのかと言っていることに気が付いて、絶句する。
右大臣家と左大臣家と言えば、都人なら誰でも知るほどの犬猿の仲だし、それに、そんなに何度も会って言葉を交わした仲でもないのに、どこをどうすれば自分に恋文が送りたくなると言うのだろうか。
まさか、この男が自分に懸想しているなどとは、夢にも思ってない。
ただ、続く沈黙を不思議に思うばかりだ。
「安倍様にご相談があって来られたのですよね?
私、席を外しますからどうぞゆるりとお話されてくださいませ」
毬は立ち上がる。
衣擦れの音が響く。
「いえ、あの。
毬姫様。
――文(ふみ)を、お送りさせて頂いてもよろしいですか?」
「文、ですか?」
毬は小首を傾げ、しばらくの間言葉の意味を吟味し、そこで初めて、唯亮が自分に恋文(こいぶみ)を送ってよいのかと言っていることに気が付いて、絶句する。
右大臣家と左大臣家と言えば、都人なら誰でも知るほどの犬猿の仲だし、それに、そんなに何度も会って言葉を交わした仲でもないのに、どこをどうすれば自分に恋文が送りたくなると言うのだろうか。


