砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 真っ直ぐな声が告げたのが自分の名前で、几帳の後ろに何気なく座っていた毬はとても驚いた。

「――いや。
 そこにいるよ」

「ご挨拶が遅れましたことお詫びしますわ、唯亮殿」

 龍星の声に次いで、毬は挨拶する。
 鈴の音のような声が響いた直後、唯亮の顔がみるみるうちに赤くなった。

「あ、いえ――。
 こちらこそ、その――。
 姫、と、またお会いできたら、と、密かに願っていましたので。あ、いえ、そのような意味ではなく」

 くすり、と、毬が笑ったのはもちろん、唯亮がどうしてここまで激しく動揺しているのか、その心に全く気付いてないからだ。

 龍星は苦虫をかみつぶしたような顔をしているし、雅之はやれやれ、と、苦笑を浮かべている。


 毬の笑い声を聞いて、緊張しすぎてしまった唯亮は口がきけなくなる。
 部屋に長く沈黙が走り、毬は慌てて詫びた。

「――失礼しました。
 お父様のことできっと動転されていらっしゃるのですね。
 それなのに私ったら――」

「いえ、そそそうではないのです。
 姫にその――。一目でもお会いできたらそれだけで私は――」