砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 ほどなくして、雅之と唯亮がやってきた。

 毬は龍星に頼まれた通り、今日はおとなしく几帳の後ろへと姿を隠していた。

「お時間頂きまして、恐縮です」

 唯亮は丁寧に頭を下げる。

「実は、父が息絶えたと報告が参りましてあまり時間は取れないのですが」

 龍星は、もちろん帝から聞いて知ってはいたが、初耳のことのように表情を曇らせる。

「それは。
 なんと申してよいのやら――」

 唯亮は、はっとしたように目を見開いた。

「いえ、決して安倍殿のせいだとは思っておりません。
 きっと父は生霊になった時点で、この世からは亡き者になってしまっていたんだと思います。
 その件では大変お世話になりました。
 しかし、本日私が来たのはそのようなことではなく――。その――」

 唯亮は言いづらそうに口ごもり、もう一度部屋を見渡す。
 一度、唇をぎゅっと噛みしめると、意を決したのか早口に述べた。


「毬姫様は、もうお休みになられましたでしょうか?」