「眩暈はしない?」
家に上がりながら、龍星が聞く。
「ええ。
今は大丈――」
大丈夫、と言いかけた毬は言葉を止めて心配そうに龍星の着物を引っ張った。
「龍、顔色悪いよ?」
「――ああ。
もうすぐ来客があるのでね」
予定外に帝が来たので、龍星は何の準備もできなかった。おそらく、もうすぐ二人は来てしまう。
このままでは、毬と唯亮は再び対面してしまう。
龍星はげんなりした気持ちでいた。
「雅之と、それから唯亮殿?」
「そう」
「お断りして休んだほうがいいんじゃない?」
事情をまるで知らない毬は、心配そうにそう言う。
「それとも、私が龍の代わりに――」
それが一番困るのだ。
自分の居ないところで毬を他の男と逢わせたくはない。
特に、帝や唯亮のように下心のある男には――。
龍星は本心など到底口にできるわけもなく、曖昧に微笑む。
「大丈夫。
少し懸案事項があるだけだ」
そうして、まだ心配そうな顔をしている毬をぎゅっと腕の中へと抱き寄せた。
極上の絹糸を集めたかのように美しい黒髪をそっと梳く。
「こうしていると、元気になる」
「良かった」
腕の中で顔をあげた毬は、笑みをこぼした。
二人が吸い寄せられるように唇を重ねて愛を確かめ合っている最中に、一条戻り橋の式神が来客があると告げてきた。
家に上がりながら、龍星が聞く。
「ええ。
今は大丈――」
大丈夫、と言いかけた毬は言葉を止めて心配そうに龍星の着物を引っ張った。
「龍、顔色悪いよ?」
「――ああ。
もうすぐ来客があるのでね」
予定外に帝が来たので、龍星は何の準備もできなかった。おそらく、もうすぐ二人は来てしまう。
このままでは、毬と唯亮は再び対面してしまう。
龍星はげんなりした気持ちでいた。
「雅之と、それから唯亮殿?」
「そう」
「お断りして休んだほうがいいんじゃない?」
事情をまるで知らない毬は、心配そうにそう言う。
「それとも、私が龍の代わりに――」
それが一番困るのだ。
自分の居ないところで毬を他の男と逢わせたくはない。
特に、帝や唯亮のように下心のある男には――。
龍星は本心など到底口にできるわけもなく、曖昧に微笑む。
「大丈夫。
少し懸案事項があるだけだ」
そうして、まだ心配そうな顔をしている毬をぎゅっと腕の中へと抱き寄せた。
極上の絹糸を集めたかのように美しい黒髪をそっと梳く。
「こうしていると、元気になる」
「良かった」
腕の中で顔をあげた毬は、笑みをこぼした。
二人が吸い寄せられるように唇を重ねて愛を確かめ合っている最中に、一条戻り橋の式神が来客があると告げてきた。


