少なからず帝の気遣いを感じ取った毬も立ち上がって見送ろうとする。
「傷は、もう痛まぬか?」
帝は心底心配していた。手を伸ばしてその首と耳に触れる。
毬はその瞬間、耳への唇付けを想い出し思わず一歩後ずさりこくりと小さくうなずいた。
龍星は毬を庇い、その細い肩を強く抱き寄せる。
「帝、私の妻を困らせないで頂けますか」
凛とした声が空気を震わせた。
「困らせているつもりは、微塵もない」
帝は柔らかい光を携えた瞳でじっと毬を見つめた。
遠慮するつもりは毛頭ないとでも言いたげな瞳を、毬は困惑顔で見つめ返す。
「――おかげさまで傷は、だいぶよくなりました」
「ご安心なされましたか?
どうぞ、お気をつけてお帰り下さい」
龍星はしれっとそういうと、毬と共に牛車に乗って夜闇に消えていく帝を見送った。
「傷は、もう痛まぬか?」
帝は心底心配していた。手を伸ばしてその首と耳に触れる。
毬はその瞬間、耳への唇付けを想い出し思わず一歩後ずさりこくりと小さくうなずいた。
龍星は毬を庇い、その細い肩を強く抱き寄せる。
「帝、私の妻を困らせないで頂けますか」
凛とした声が空気を震わせた。
「困らせているつもりは、微塵もない」
帝は柔らかい光を携えた瞳でじっと毬を見つめた。
遠慮するつもりは毛頭ないとでも言いたげな瞳を、毬は困惑顔で見つめ返す。
「――おかげさまで傷は、だいぶよくなりました」
「ご安心なされましたか?
どうぞ、お気をつけてお帰り下さい」
龍星はしれっとそういうと、毬と共に牛車に乗って夜闇に消えていく帝を見送った。


