砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

 息をつめて二人の話に耳を傾けていた毬は、ふうと息を吐く。

「姫はどう思う?」

 その、些細な、しかし物言いたげな仕草を見逃すことなく、帝が発言を促した。

「ほとぼりが冷めるまで、出家させればいいのではないかしら?
 どこかの山寺にでも放り込んでおけばいいわよ。そうすれば、お兄様だって少しは強くなると思うし。世間の人だってそのうち忘れてしまうわ」

 都人は噂好きだが、過去のことにまでは執着しない。

 どう?と、毬は龍星に向かって首を傾げてみせる。

「そうだね、信頼できる人のところに頼んでみよう」

 龍星は毬に答えてから帝に視線を戻す。

「道剣は、遠くへ飛ばされてはどうでしょうか?
 彼の力はそんなに強いものではない。
 京から遠く、大宰府辺りにでも追いやってしまえば、その力をここに及ばせることは出来なくなります」

「分かった。
 二人が納得するなら、そうしよう」

 帝が頷いて緩やかに立ち上がる。

 御台の身代わりとして傷を負ってしまった毬に対して、帝は彼なりに心を痛めてもいた。

 だからこそ。
 今まで以上に積極的に彼女を入内に誘ったりもするし、この件も、毬が納得する方法で片付けたかった。

 そのためだけに、わざわざ人目を忍んで遅い時間に御所を抜け出してきたのだった。