砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「本当はそんな政略結婚などに興味はない。
 貴女さえ、傍にいてくれれば」

 艶のある甘い声。深みのある褐色めいた瞳は、毬を映して魅惑的に耀(かがよ)う。

 それを静かに無視できるほど、毬は恋に手練れてはいなかった。
 うっすら頬が赤みを帯びてきたことを見れば、彼女の動揺は一目瞭然。
 
 にこりと帝は品の良い笑みを浮かべる。

「いつだって、貴女のために私の心を開けておくよ、姫」

 歯の浮きそうな台詞も、この男にかかれば甘く響く。
 一瞬雰囲気にのまれてしまった毬だが、軽く首を横に振り一歩下がった。

「お兄様、冗談が過ぎますわ。
 私、お仕事にもどりますね」


 緩やかに礼をし、もう一度顔をあげた毬は、もはや、敏腕の女房といった雰囲気しか携えておらず、慣れた仕草で帝の案内を始める。


 その背中越しに、帝は毬を抱きしめた。


「みくびるなよ。
 冗談でこんなことが言えるほど、軽い男ではない」

 わざとケガをしてないほうの耳元に唇を寄せ、熱い吐息を吹きかけるように囁くと、朱に染まる彼女の耳に、遠慮もなく唇を落とし
た。