ほどなくして、雅之が、唯亮と和子を連れて屋敷へと現れた。
雅之は龍星を捕まえて、その耳元に何事か囁く。
龍星は、一瞬顔を曇らせたが、すぐにいつもの冷静沈着な表情を取り戻した。
毬は初めて、右大臣家の娘、和子をそっと御簾越しに見た。
一度自分で切り落とした髪を、鬘として後ろに結わえている。
自然ではあったが、事情を知っている毬から見るとその姿は痛々しくさえあった。
毬とそんなに年齢は変わらないのであろうか。
垣間見た横顔は、何か強い意志を持っていることを隠そうとしないほど、強くこわばった顔であった。
「わざわざお呼びたてして申し訳ございません」
龍星が型どおりの挨拶をする。
「いえ、とんでもありません。
……何でしょうか?」
二人の間には御簾があるし、和子は座ってすぐにその顔を扇子で隠していた。
緊張感を伴う声だけが、部屋を行き交う。
「ここだけのお話なのです、先日、嵐山へと向かう途中、御台様が襲われるという謀反がおきました」
「まぁ」
和子は何の感情も見せない。
この件について、なんとしてでも隠したいであろう唯亮からその情報が妹の和子には漏れることはないだろうと、龍星は考えていた。
雅之は龍星を捕まえて、その耳元に何事か囁く。
龍星は、一瞬顔を曇らせたが、すぐにいつもの冷静沈着な表情を取り戻した。
毬は初めて、右大臣家の娘、和子をそっと御簾越しに見た。
一度自分で切り落とした髪を、鬘として後ろに結わえている。
自然ではあったが、事情を知っている毬から見るとその姿は痛々しくさえあった。
毬とそんなに年齢は変わらないのであろうか。
垣間見た横顔は、何か強い意志を持っていることを隠そうとしないほど、強くこわばった顔であった。
「わざわざお呼びたてして申し訳ございません」
龍星が型どおりの挨拶をする。
「いえ、とんでもありません。
……何でしょうか?」
二人の間には御簾があるし、和子は座ってすぐにその顔を扇子で隠していた。
緊張感を伴う声だけが、部屋を行き交う。
「ここだけのお話なのです、先日、嵐山へと向かう途中、御台様が襲われるという謀反がおきました」
「まぁ」
和子は何の感情も見せない。
この件について、なんとしてでも隠したいであろう唯亮からその情報が妹の和子には漏れることはないだろうと、龍星は考えていた。


