「出来るけど、私。一緒に内裏に入るの?」

 思いがけない展開に、毬は目を瞠る。

「どっちにしたって少しの間だ」

「少しって?」
 
 戸惑う毬に、龍星はふわりと笑って見せた。

「嫌なら辞めていいんだよ」

 毬はぶるぶると首を横に振る。

「やるっ」

 毬は踵を返して、着替えに行った。

 龍星は一人きりになって、ようやくふぅと息を吐く。

 もちろん、強引に毬を巻き込まなくても、この件を解決する方法も考えることは出来る。



 しかし。

 帝を見てようやく気づいたのだ。

 勝手に動いて欲しくない人たちには、こちらから用事を命じるほかない、ということに。