「私がこの姿で和子と会うのもまずいだろう。
適材適所というやつさ」
帝は真っ直ぐに龍星を見据えていた。
……どうして、帝にしても毬にしても自分の領分を弁えない……
龍星は心の中で、舌打ちした。
もっとも、その凄まじいほど綺麗な顔には動揺は微塵も滲ませてはいないのだが。
そうして、形の良い唇の端をあげて冷笑してみせる。
「適材適所と、申されましても。
ここは帝には適してらっしゃらないかと思いますが」
「突然そんな口調を作っても駄目だよ、龍星。
お前は私を見くびりすぎている」
「そういうわけではございません、しかし」
「くどいぞ、龍星。
時間がないのだろう?
早く戻れ」
帝はそういうと、意思の強そうな紅い唇を真横に閉じた。
もう、議論する気もないらしい。
龍星は懐から人型を取り出して、自分の髪の毛を一本挟んだ。
それに何かしらの呪を唱えて、帝に差し出す。
「何かありましたらこれに、息を吹きかけてください。
気休めくらいにはなるはずです」
「お前が心配性だとは、今の今まで知らなかったよ」
茶化すような帝の言葉に、何も答えずに龍星はその場を後にした。
適材適所というやつさ」
帝は真っ直ぐに龍星を見据えていた。
……どうして、帝にしても毬にしても自分の領分を弁えない……
龍星は心の中で、舌打ちした。
もっとも、その凄まじいほど綺麗な顔には動揺は微塵も滲ませてはいないのだが。
そうして、形の良い唇の端をあげて冷笑してみせる。
「適材適所と、申されましても。
ここは帝には適してらっしゃらないかと思いますが」
「突然そんな口調を作っても駄目だよ、龍星。
お前は私を見くびりすぎている」
「そういうわけではございません、しかし」
「くどいぞ、龍星。
時間がないのだろう?
早く戻れ」
帝はそういうと、意思の強そうな紅い唇を真横に閉じた。
もう、議論する気もないらしい。
龍星は懐から人型を取り出して、自分の髪の毛を一本挟んだ。
それに何かしらの呪を唱えて、帝に差し出す。
「何かありましたらこれに、息を吹きかけてください。
気休めくらいにはなるはずです」
「お前が心配性だとは、今の今まで知らなかったよ」
茶化すような帝の言葉に、何も答えずに龍星はその場を後にした。


