龍星は、毬を落ち着かせると何もなかったかのように、帝と雅之の居る部屋へと戻る。

 その表情は、さっきまでのとは別人のように落ち着いた表情を取り戻していた。

「奴から何か聞きだせましたか?」

「いや」

 と、帝は首を振る。

「私が直接聞き出しましょう」

 龍星は立ち話でそう言うと、踵を返して歩き出す。

「分かった。連れて行こう」

「龍星、俺は?」

 雅之の言葉に、龍星は紅い唇に指を当てて何か思考する。

「――先に行家に確認したいことがある。
 その返答次第で、頼みたいことが変わるんだが――。
 まずはそれを見届けてくれないか」

「わかった」

 相変わらず謎かけのような言葉ではあるが、今わからないことを考えても仕方がない、と思っている雅之はためらうことなく立ち上がる。

 三人は、共に行家を幽閉している牢へと向かうことにした。