砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「毬姫、こんな話に参加していたら、お部屋に戻る前に氷が溶けてしまうよ」

 帝がゆったりした仕草で、前に座りながら言う。

「溶ける前にお話を終わらせていただけますか、お兄様?」

 毬は、いたずらを覚えた子供のような笑みを浮かべて言う。
 無邪気な口調に帝は相好を崩す。

「こんなに可愛い妹のお願いなら、聞かないわけにもいかないな」

「……帝、いけません」

 龍星が咎め、座っている毬の背中にそっと手を当てた。

「毬、まだ情報収集中なんだ。部屋まで連れて行くよ」

「決まったら、私を仲間に入れてくれる?」

「どうしてそんなに俺を困らせるの」

 龍星は帝になど聞き覚えの無いような甘い声で言うと、強引に毬を抱き上げた。

 可能であれば、二度と、毬を人前になど出したくないのだ。
 屋敷の奥に閉じ込めて、誰からも遠ざけておきたい。

「龍を困らせてるつもりなんてないもんっ」

 毬は腕の中で唇を尖らせる。

「……じゃあ、今すぐ俺に行家を殺させたい?」

 その言葉の奥に煌く刃物を目の当たりにし、毬はようやく、渋々と口を閉じた。