砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】

「ほら、そうなれば龍星にとっても私は兄ではないか。
 兄と慕ってくれれば……」

 調子に乗った帝の軽口に龍星が肩を竦める。
 毬はその隙に龍星の腕から抜け出して、実際目のやり場に困っている雅之の元へと近寄った。

 帝と龍星は、子供じみた言い合いを続けている。

「雅之、ありがとう」

「とんでもない。
 毬、その……、まだ、痛む?」

 謝ればまた、この姫は怒り出すだろうと気づいている雅之は、言葉を選んで声を掛ける。

「少し。
 でも、だいぶ楽になったのよ。痛み止めの薬があるの。
 痛くなったらそれを飲めば平気」

 毬はにこりと笑ってみせる。
 座っている雅之にあわせて、毬も隣に座る。

「髪、変?」

 右側だけ削がれた前髪を毬は少しだけ気に病んでいた。
 だから今は誤魔化すためにくるりと巻いて、髪飾りを挿している。
 もっとも、龍星に聞いても絶対に冷静な判断はしてくれそうにないので、聞かなかったのだが。龍星なら、たとえ毬が全て髪を削いでしまっても可愛いとしか言ってくれない気がした。